様々な打撃法について

著しい体格差のある人間と向い合う時は…

前回の記事で知人の柔道家(五段の猛者!)が、立った状態で向い合えば、体の大きい方が圧倒的に有利。しかし、寝技に持ち込めば、体が大きい、小さいは関係ないと言っていた話を書いた。そう言われてみれば、確かにそうである。

以前、この記事にも書いたが、自分の母方の祖父は古流の柔術と講道館柔道の有段者であった。その祖父が柔道をやっていた当時は高専柔道が盛んであったそうだ。高専柔道とは、旧制高等学校・大学予科・旧制専門学校の柔道大会で行なわれた寝技中心の柔道で、1898年(明治31年)、東京の第一高等学校と仙台の第二高等学校の柔道部の間で行われた対抗戦から始まった。その試合は、立ち技から直接寝技に引き込むことが特色で、立ち技中心の柔道家はこれにかなり、苦戦したらしい。その戦法は寝技、絞め技が特殊であり、現在の三角絞めなどは高専柔道から引き継がれた技である。

ここで、禅道会の話になる。何度も繰り返し、書いているが、自分は禅道会の空手を学んでいる者ではない。こうして記事を書いているのは、あくまでも禅道会の空手に関心があること、そして、様々な武道・格闘技関係の話をみなさんにお伝えしたいから、書いているだけである。まわりくどい話になったが、禅道会の試合は打撃技のみならず、投げ技・寝技・組み技の全てが認められている総合武道である。

以前、この記事で紹介させていただいた札幌で大誠館という道場の主宰者である宮崎さんは、初めて禅道会の試合を観た時、「組まれたら、お終いだな」と思ったそうだ。自分もそれに同感である。以前、アマレスをやっている人と試し合いのような感じで、組手をやったことがあるが、中間距離では自分が圧倒的に有利だった。こちらのパンチで相手を窮地に立たせていたのだが、一瞬の間にタックルをされて、倒された。立ち技の打撃系格闘技をやっている人間がこれをやられたら、万事休すである。それでも、自分は負けん気が強いから、相手の首を右腕で絞めてタップさせることができた。とはいえ、向こうはタックルで倒した時点で「勝った!」と思ったから、油断した相手に勝てたようなものである。あれから、寝技をかけられていたら、自分がタップしていたと思う。

そういう意味で、打・投・極の全てを体得している者は強いと思うのである。だからこそ、禅道会の試合は、ルールはあるにせよ、極めて実践的にトータルに強いと思うのである。なおかつ、総合的な格闘武道でありながらも、安全性も高いと小沢代表から聞いた。グローブ着用の打撃戦は脳を揺らす。それで倒された場合の危険度も高い(この点については、また改めて書く)。しかし、禅道会のような試合だと、打ち合いから接近戦になり、そこから投げて、極めるというケースが多い。関節を極められたら、その激痛に耐えられる者はいない。だから、すぐにタップである。そういう意味でも、グローブ着用の打撃戦格闘技より、実戦的ではあっても、選手の安全度は高いのだ。

様々な打撃法について パンチ編

禅道会の総合的な技は素晴らしいと思うが、自分は長年、打撃系格闘技をやってきたから、やはり、打撃技が好きなのである。そして、選手を引退して、指導にあたるようになってからは、様々な武道・格闘技の打撃法を学んできた。例えば、パンチ。利き手の右ストレートを打つ場合は経験者なら、誰でも知っていることだが、頭から鼠蹊部に一本の軸を通すように意識する。そのうえで、まずは右足を蹴り込んで、腰を斬るにして回転させる。その回転を肩から腕にかけて連動させて、力まずに打つ。手打ちでは威力が無いが、こうして打ったパンチは当たり所が良ければ、一発で相手を倒すことができる。また、同じく回転運動による打ち方だが、もう一つの打ち方がある。パンチを打つ際、肩甲骨から打つようにするのだ。それを意識的にやるのはなかなか難しいが、打つ時に一瞬、肩甲骨を後ろに引くのである。イメージ的には、輪ゴムを引っ張って離すような感じだ。パンチは手ではなく、肩甲骨から放り投げるようにして打つ。こうしたパンチは俗に言うヒットマッスル、つまり広背筋を使うから、その威力は強くなる。なおかつ、パンチの伸びもあるから、フォロースルーも効くのだ。コツさえつかめば、このようなパンチも打てるようになる。

様々な打撃法について 蹴り編

さらに、もう一つ。キックボクサーがムエタイ選手のようなシャープで威力のある蹴りを使いこなすのはこれもまた、難しい。一説では、タイ人は胴が短く、足が長く、そして骨盤が小さいから、その身体の利点を活かして、あのような打撃ができると言われているが、日本人でも体の使いようによっては、それができないわけではない。例えば、回し蹴り。体に軸を通すことはパンチを打つ時と同じだが、蹴る場合は蹴り足よりも軸足の方が大切になる。右のミドルを蹴る時は、左足の拇指球を始点にして、左足と腰を回転させながら右足の脛を放るようにして蹴る。蹴り足より、軸足が大切なのである。むろん、この時、体が前後にぶれるようではいけない。軸を通した状態で、でんでん太鼓のように蹴るのである。それともう一つ。ムエタイの選手がなぜ、あのような蹴り方ができるのかをビデオを観たり、実際に彼らの試合を観ることで研究したことがある。そうして、自分なりに考えたのが、足が体の中心(みぞおちあたり)とつながって、蹴るというイメージである。例えて言うならば、蜘蛛のような感じである。あくまでも自分の経験値だが、こうしたイメージで蹴るようにすると、ムエタイ選手に近い蹴り方ができるようになる。蹴り足に重心も乗って、重い蹴りが出せるのである。蹴り足を振りぬくような感じで蹴れるようにもなる。そういう意味で、ムエタイ選手の蹴り技は威力もあり、華麗なまでの見応えがあるが、小沢代表から「総合ルールになると、ちょっと別問題になる」と聞いたことがあった。この蹴り方をすると、相手にキャッチされて、テイクダウンを取られやすのだそうだ。だから、禅道会ではこのような蹴り方とは別の蹴り方をする(←間違っていないかな)。禅道会の打撃法で、自分が強い関心を抱いているのは、小沢代表が言われる「抗重筋」を使った体の使い方である。

実際、小沢代表が有段者の門下生と組手をやっている動画を見せてもらったことがあるが、ローキック一発で倒されていた。まだある。それは小沢代表による、名古屋セミナーが行われた時のこと。話の中盤に小沢代表が同行されていた齋藤さんに「ちょっと、出てきてもらえるかな」と言われた。抗重筋による技の威力を見せてくれると言うのだ。あの時の齋藤さんの「あれをやられるのか…」という顔は未だに覚えている。そして、初めにやったのが齋藤さんを立たせておいて、小沢代表が予備動作なく、開掌の甲側で齋藤さんの胸をドスッと打った。その瞬間、齋藤さんは抵抗のしようもなく、倒されたのである。次にローキック。これもごく軽く蹴ったのだが、蹴られ齋藤さんはその一撃で倒された。セミナーに参加していた講習者はいずれも何らかの武道・格闘技の経験者だったが、そのあまりにも凄まじい威力に度肝を抜かれたものだ。あんな軽そうに打ち、蹴っているにもかかわらず、なぜ、あのような破壊力が出るのか…。自分たちがやってきた打撃法とは異質の衝撃力のある打撃、それに一番、魅了されたのは他ならぬこの自分である。抗重筋を使った打撃法…ぜひ、体得したいと思っている。

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