禅道会 大畑慶高の武道人生⑩

人は一人では生きていけないから。

臨死体験をした大畑は、「死ぬのは苦しいものではないかも」と思ったそうだ。もともと、国のために命を捧げようとしていた男である。死を恐れるより、価値ある自分を人生の中で見出そうとしていたのだ。だからこそ、野垂れ死にや交通事故などで命を失うようなことはしたくないと言った。「名誉ある戦死なら、いいんですけれど」と語る、その言葉に嘘はないだろう。

「お金があっても、権力があっても、死ねば同じじゃないですか。死んだときに自分が何を残しているかが大切だと思います。自分としては、全て生きているうちにやり遂げたという達成感。そして、人からは『あの人は素晴らしかった』と思われるような最後を迎えたいですね。臨死体験の時は、子どもの成長を見たいという思いで意識を戻したから、感謝しています。もちろん、家内にも。家族の存在が私の大きな支えになっています」

その大畑がこう言った。

「私の経験から言って、絶対に人は一人では生きていくことはできません」

過酷な自衛隊時代、起業してから直面した事態、空手の稽古…様々な体験を通して、そのような言葉が彼の口から出たと思うが、小野田寛郎さんを講演会で招いたときに、改めて、その気持ちを強くしたと言う。
小野田さんは旧陸軍中野中学校(戦前にあった、スパイ育成を目的とした軍の学校)の出身で、情報将校として大東亜戦争に従軍し、数々のゲリラ戦を展開した人である。戦争終結から29年を経て、フィリピンのルパング島から日本に帰還した。なぜ、小野田さんが戦争終結から29年間も現地でゲリラ戦を行っていたかというと、任務解除の命令が届かなかったからだ。戦争終結後も三名の部下とともに作戦を継続し、ルパング島が再び日本軍の制圧下に戻ってくるときのために密林にこもって、活動を続けていたのだ。しかし、長年の戦闘で疲労がたまり、最後の部下が亡くなってからは孤独に苛まされ、最終的にかつての上官から読み上げられた任務解除・帰国命令によって、武装を解除し、帰国したのである。その小野田さんが「ぼくは武装解除しないで、戻ってきました。しかし、その経験から言っても、人は一人では生きていけないのです」と語ったと言う。
戦場のプロから出た言葉である。戦場に行くことを目指していた大畑だから、小野田さんの言葉が深く残ったのだ。

どんなに、強い心を持っていても、人間は孤独には耐え切れず、他者との関わりを求めている。さらに、社会との関わりがなかったら、人間が生きていくうえでの文化的な生活はできないのだ。食事や衣類、病気になった時、人はそこに関わらざるを得ない。「自分は一人でも平気だ」と言う人がいるかもしれない。果たして、そうだろうか。人一倍、強靭な精神力を持った小野田さんですら、「人は一人では生きていられない」と言ったのだ。人との関わりがあるからこそ、喜びも楽しみも幸せもあるのだ。もちろん、その逆もある。怒りや悲しみなどのネガティブな感情も芽生える。それによって、ストレスを抱えることも多々、あるはずだ。しかし、人が生きている以上、それは避けられないし、乗り越えなければならない。様々な体験を積むことで、人は成長するのだ。「他者との関わりの延長線上に自分の成長があることを知ってほしい」と大畑は語った。それは、幾多の経験をしたからこその言葉なのだろう。

コロナ禍もチャンス!と思った。その真意は…

ここで話を変える。大畑はワールドジャパン株式会社で、エステ機器販売、エステティックサロン経営、そして、エステティックサロン コンサルタント業を展開している。本店が横浜で東京、大阪、名古屋に営業所を構え、代官山にショールームも持っている。美容機器はトータルで70種類以上、エステ商材も取り扱い、競合の激しいこの業界の中でも、1500社以上のエステサロン、治療院に選ばれているというから、たいしたものだ。
がしかし、ここに大きなピンチがきた。言わずと知れたコロナ禍である。コロナショックとそれに伴う緊急事態宣言で、4月~5月の売り上げがほぼ、ゼロにまで落ち込んだのだ。
企業として、毎月8000万円近い売り上げだったのが、ゼロである。大畑だけでなく、どの企業経営者も今までにない事態に直面したのだ。ワールドジャパンは次年度に向けて設備投資や店舗展開を構想していただけに、これは会社としても緊急事態であった。だが、ここで大畑は「これもチャンス」と思ったそうだ。

「なぜ、そう思ったかと言うと、このような事態も乗り越えて、収益を上げている企業はあるのです。いち早く展開を変えて、今までの業態からシフトチェンジした会社はいくらでもあります。これまで日本、いや、世界が体験しなかった状況ですが、コロナ禍は戦争ではありません。つまり、人の生命や財産は減っていないのです。自粛という事態を迎え、外出して買い物をしたり、食事をしたりということは減りましたが、生活するには、モノを買うという行為があります。それが自宅通販。ネットショップは以前からありましたが、ここにきて、その需要は今まで以上に高まっています。レンタルも急激に増えましたし、オンラインという新しい手段も始まりました。もう一つ、私がチャンスと思ったのは、事業助成金です。ただでさえ、厳しい経済情勢に加えて、コロナです。このままにしていたら、国の経済そのものが破綻します。だから、企業への融資のハードルが低くなりました。何をするにしても、お金が必要になりますが、まずはそれが可能になったのです」

武道や格闘技の試合で言えば、相手の状況が変わったようなもの。それに対抗するには、戦法そのものを変えていかなければいけない。だから、大畑は戦略の一環として、まずは資金集めに奔走した。助成金も借りて、かける経費は最小限にした。万が一、売り上げが一年間無いとしても会社が生き残れるだけの対処をした。さらに、会社の収益部門のシフトチェンジも行い、新たな商品を開発してクラウドファイディングを活用したり、事業計画を新規で立ち上げるなど、コロナという世界規模の問題に様々な対処を行った。ちなみに新たに打ち出した事業計画は三つ。「パンチと同じで、一発必中を狙うのではなく、多彩な攻撃で仕掛けるのと一緒。進める駒が三つあれば、今までの経営体験から言って、必ずどれかは当たりますから」と大畑。このあたり、長年、修行してきた武道がビジネスに存分に活かされているのだ。武道だけではなく、自衛隊時代の訓練も活きていると思う。状況に応じての戦略を立て、実行することは戦いだけでなく、企業の生き残り、ビジネス戦略にも活かされるのだ。ちなみに、事業助成金で融資を受けた額は三億円。社員から「返済できるんですか?」と心配されたらしいが、大畑は「返済する可能性があるから、それだけの融資を受けた」と答えたと言う。

ちなみに、大畑と話していて、何度も「ワクワクして生きる」という言葉を聞かされた。このあたりは禅道会の小沢代表からも聞かされたことだが、改めて書いておこう。脳が快の状態で強化されていれば、人間の直観力や整理能力は上がり、問題解決能力もアップする。人に指示されて、嫌々するのではなく、自分で「こうしたい、こうありたい」という目標を設定して、行動していくのだ。感じて、考えて、実行する。それをすることで、目標は次第に目の前に近づいてくる。コロナで行く先の見えない状況が続いているが、国民の全てが、大畑と同じ気持ちでこれからの人生を歩んでいってほしいと思っている。

禅道会 大畑慶高の武道人生 記事一覧

2020年11月19日発売
「伝説の元レンジャーが教える最強メンタルの鍛え方」

伝説の元レンジャーが教える最強メンタルの鍛え方

禅道会横浜支部長の大畑慶高が本を執筆!
2020年11月19日に出版されます!

発行:白夜書房
四六判 192ページ
定価 1,500円+税
ISBN 9784864942904

陸上自衛隊レンジャー部隊に所属した経験と、禅道会で積み重ねた鍛錬と大会の実績、そして会社経営者としての見地から、昨日の自分より強くなる方法を解説した本です。

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