空手道禅道会を視る②

打・投・極・絞

第三者の目線で視る「空手道禅道会」について。前回のトピックスでも記載したように、禅道会は打撃技、投げ技、関節技の「打・投・極」の試合を行う総合武道の空手である。初めて、動画でその試合を観た時の印象は「洗練されている」の一言についた。自分が観てきた総合格闘技は歴史が浅いこともあり、総合格闘技というより、組技や寝技だけの印象が強かったからだ。時代の移り変わりと共に、その技術体系が進化してきたせいもあるだろう。禅道会の試合は、その大半が打撃と投げ技、関節技と見事に融合されていると感じたのだ。自分も打撃系格闘技を長年にわたってやってきた一人だが、打撃のみに特化している格闘技・武道をやっている者にとって、組まれるのは嫌なものだ。投げられ、絞められたらそれで終わりという展開が容易に予想されるからだ。「組まれる前にパンチで仕留めることができる」と思っても、相手は動く人間である。打ち合いに出てくる対戦相手だからこそ、それが通用するのであって、組技、関節技、寝技に長けた者と対戦すると、「蹴ったところにタックルをかけられたら…」という予想は容易につく。したがって、狙うのは相手が出てくる隙を見てのカウンターしかない。何年か前、著名な空手家と柔道家が対戦したが、やはり、空手家は相手の組技を警戒するあまり、思い切った攻撃ができなかった。その一方で柔道家は「組んだら、こっちのもの」という自信があったと思う。結果は見事にその通りになった。

空手道禅道会 格闘イメージ

こうして、総合格闘技強し!の風潮は格闘技ファンの間にも伝わっていったのだ。同時に、その団体も増え、試合も数多く行われるようになった。ここで禅道会の歴史を見ると、その設立は1991年となっている。試合では手にオープンフィンガー、顔にはヘッドギアを着け、男性の場合はノーファウルカップを着ける。その内容はパンチ、キックなどの打撃技、投げ技、関節技、絞め技によるノックアウト及びギブアップにて勝敗を決する総合格闘技ルールだ。全ての試合を観てきたわけではないが、公開されている動画を観る限り、初めはパンチと蹴りからの攻防が始まる。そして、相手の一瞬をついての組み、それから投げ、倒してからグラウンドでの攻防が大半であった。安全面を考慮して、いくつかの禁止技はむろんある。しかし、その戦法は極めて実戦に近いと思われた。街中でたまに見かける喧嘩を思い起こせば、大半が素人だから、間合をとっての打撃戦の攻防はまず無い。大抵は組んず、ほぐれつの泥仕合である。格闘家や武道の経験者から見れば、「あそこで、こう仕掛ければいいのに」と思うことが多々あるだろう。しかし、それが実戦である。何をやってくるか、どう仕掛けてくるか分からない未知の人間と戦う時は格闘技や武道をやっている人間といえども、相手への警戒心は100%と無いとは言えない。だからこそ、パンチや蹴りもできる、組んでも投げもできるという格闘能力があることは、その鍛錬をやってきた者にしてみれば、自らの自信につながると思うのだ。そういう意味で禅道会のルールは極めて実戦に近いと感じたのだ。

興和警備保障株式会社代表の西村政志さんと 禅道会小沢代表興和警備保障株式会社代表の西村政志氏と
禅道会 小沢代表
Photo:日本武道総合格闘技連盟ブログより

そのような感想を抱いたのは自分だけではない。特殊要人警護をも引き受ける警備会社、興和警備保障の代表である西村政志氏も「禅道会さんと知り合った時、打撃ОK、投げ技ОK、絞め技ОK、戦う際の心構えや気迫の強さを選手のみなさんが持っている。素晴らしいと思うし、こういう武道は現代社会で必要なものだと思います。人の命や財産を守る職務をされている警察や警備会社でも禅道会を護身術として導入してほしいですね。実戦という観点から言えば、お世辞抜きにそれだけの価値がある武道だと感じさせられました」と絶賛する。

西村氏と言えば、斯界でも有名な実戦のエキスパートである。その氏をして、高い評価を受けるのだから、実戦武道として優れたものがあると言ってもいいだろう。続けて、西村氏は大会に出場する選手を見て、こんな感想を語ったそうだ。

「出場される選手の方の前腕を触った時に気づいたことですが、非常にいい筋肉をしている。前腕の筋肉はつかんで、締め上げるうえで役立つ筋肉です。他の武道・格闘技でもトップクラスの方々は、前腕の強さを持っています。ウエイトトレーニングでつけた筋肉ではなく、締める、関節をとるという日常の稽古で自然についてくる筋肉です。ウエイトトレーニングのプロから聞いた話ですが、人間には650か所ぐらいの筋肉がついているそうです。そして、戦うにあたって、どの筋肉群が必要なのかも教えてもらったことがあります。ぼくの得意はフックなんだけど、その威力を支える筋肉があります。そういう意味も含めて、禅道会の選手はみなさんは前腕が太いから『これはいいパンチを打てるな~』と思いました。ビルダーみたいな見た目の筋肉ではなく、使える筋肉を持っているなと感心しました。関節でも締めでも、それに使うための筋肉がついている。さすがだなと思いました。そういう意味で禅道会さんが世界的にも広がってほしいし、国内でも治安を守る組織には導入されてほしいと思います」

空手道禅道会 格闘イメージ

話を禅道会に戻す。格闘技も武道もルールの範囲が少なければ、少ない程、選手の心構えも変わってくる。どんな攻撃が来ても、どう対処すればいいか、自分がどう動けばいいかと対処できるからだ。そしてもう一つ、書いておきたいことがある。ルールの規制が少ないと、それだけ攻防における危険度も高くなるのではないかということだ。そんな疑問に対して、禅道会側からはこんな答えが返ってきた。

「打撃のみのルールに比較すると、関節技が認められるルールは瞬時に決着がつくんです。そういう意味でルールの範囲は少なくても、意外と怪我は少ないんですね。打撃に特化した格闘技や武道の場合、顔面に攻撃をくらい続けば、脳に衝撃が響きます。それが後の後遺症にもなりかねません。でも、そこに組む、投げる、極めるという攻撃のパターンが入ってくると、攻撃のバリエーションは増えても、頭部へのダメージやその他の個所の怪我も少なくなるんです」

格闘技・武道をやる者にとって、怪我はつきものである。しかし、仕事をする一般社会人の場合、そんなリスクを抱えてまでやるとなると、「自分には到底できない」と思うことだろう。しかし、いざという時のための護身の技術は身につけたいと思う人も多いと思う。そんな人に向けて、禅道会では「安全な内容で誰もが護身の武道の技術を体得できる」稽古体系を確立しているのだ。そこでは、通常の空手の移動稽古があり、ミット打ちや段階に応じたライトコンタクトの組手も行われる。このあたりは、他の空手道場と同じだ。しかし、ここに呼吸法を伴った稽古と抗重力筋を行使する身体操作の稽古が加わる。抗重力筋とは聞きなれない言葉だが、歩く動作や立っている時、もしくは座っている時に重力をはじめとする様々な拮抗する筋力のことだ。禅道会の小沢代表が編み出したこのメソッドは、「寝ての呼吸」、「座っての呼吸」、「立っての呼吸」、これがだいたい九分から十分。それからストレッチ呼吸で五分。この三つの姿勢での呼吸法を行う。それからストレッチ呼吸で五分。おおよそ、十五分の稽古である。それだけで、護身の能力は体得できると、小沢代表は自信をもって言う。

次回はこのあたりの内容についても記事で取り上げてみたい。

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